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小泉・安倍内閣が目指す「小さい国家」路線により、医療・年金・介護・福祉の予算が縮減され、全国から悲鳴があがっています。内閣府が実施した「国民生活に関する世論調査」(9月8日)によると、「日常生活で悩みや不安を感じている」と答えた人は69.5%の過去最高を記録しました。今回の参議院選挙の結果は、高齢化や年金問題など将来への不安をどうにかして欲しいと、国民が一票を投じた結果に他なりません。与野党逆転している参議院で、社民党は何を主張していくのか。
渕上貞雄・参議院議員と社民党政審事務局・小林わかばさん(社会保障担当)に対談を行っていただきました。
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逆転参院について
小林:参議院選挙、ご苦労さまでした。選挙結果は、与野党逆転の参議院になりましたが、今後国会での取り組みはどのようになるのでしょうか。
渕上:安倍政権の進める「改革」路線に国民の「No」の審判が下った。与野党逆転参議院で、野党側の主張や政策の優位性を示しながら、証人喚問や国政調査権などを活用し、野党が協力して「政治とカネ」、「税金の無駄遣い」を徹底究明していきます。
国民に痛みを押しつけ弱者に冷たい与党との違いをアピールするため、最賃法や後期高齢者医療制度の凍結、障害者自立支援法の見直し、政治資金規正法改正案など、政治とカネや、人権・格差是正・生活擁護の問題については、積極的に野党共同での法案提出を追求します。
国民生活を悪化させる諸施策と厳しく対決し、タイミングを計りながら問責決議も提出するなどして、政府・与党を追い込み、政権交代に向けて全力を挙げます。
「宙に浮いた年金」「消えた年金」パニック
小林:参議院選挙で大きな争点となったのは社会保険庁のずさんな年金記録管理の問題でした。5千万件にものぼる年金記録が、誰のものかわからないまま、宙に浮いた状態で放置されてきた。しかも、その半数以上は、年金支給がすでに始まっている人の記録で、その分、年金額が減らされている。さらに、本人は年金を納付した領収書を持っているのに、その記録が社会保険庁のどこにもないという、年金記録が消える事件まで発覚した。本来、受けることができるはずの年金を受け取っていない人はどれだけいるのか、それがいくらなのか、不安は広がります。
渕上:「社保庁が振り込め詐欺とは知らなんだ」。新聞に掲載された川柳を、私は笑えなかった。04年の参院選では、国会議員の「年金未納問題」や社保庁による年金保険料のムダ遣い・流用などに国民の批判が集中した。未納で年金受給額が減ることは本人も分かっているが、今回の「宙に浮いた年金」「消えた年金」は、本人には一切、誤りがない。被害はだれに及ぶかわからない。自分かもしれない。パニック状態になるのは当然だ。
小林:年金は払った記録に応じてもらえる。その信頼があるから、国民は記録の管理を国に委ねてきた。それが崩れていたというのでは、社会保険制度に対する国民の信頼は根幹から揺らいでしまう。さらに、社保庁や市町村の職員の年金保険料等の横領の事実がでてきたのでは、国民の怒りが収まらないのは当然です。
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渕上:申請主義にも問題がある。年金は加入者が申し出ない限り支給されない。宙に浮いていても申請がなければ関係ない。記録の訂正も、本人が領収書などの証拠を持っていなければ追い返されるだけ。申請主義の上にあぐらをかき、国民の立場に立って業務運営を行ってこなかったことが大きな原因だ。社民党は、社会保険庁と国民が双方向の情報を共有するシステムの整備を訴えている。具体的には、これまでの年金納付履歴、自分が納めた保険料額、算定される年金見込み額を本人が確認できる「マイ年金通帳」の導入だ。社会保険庁と国民が双方で点検を行うことにより、早期に誤りを訂正することも可能だし、事業者や窓口における不正防止にもつながる。
政府の対策はまやかし
小林:安倍総理は、国会では、「不安をあおるな」と野党を牽制していたのに、選挙が近づくと態度がコロッと変わりましたね。選挙中に、「年金記録確認中央第三者委員会」が「消えた年金」15件の記録訂正のあっせん案を出したり、政府が年金記録に関する新聞の折り込み広告を入れていた。安倍総理は「最後の一人まですべての記録を調べる」と明言されたけれど、本当にできるのでしょうか。
渕上:年金記録データが壊れていたり、入力されていなければ、お金をいくら投じてコンピュータのソフトを開発し、コンピュータを回しても探しようがない。5千万件のうち氏名のない記録は何と1割強もある。氏名、生年月日、性別のデータが入力されていない記録も4百件近くある。「消えた年金記録」の救済をはかる第三者委員会が、記録訂正の判断を「一応確からしい」とか、申し立て者の「人柄」「態度」をみるというのもヘンだ。政府の対策はまやかしに過ぎない。
100年安心の年金制度はどこへ?!
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小林:年金記録問題で、政府・与党の「100年安心の年金制度」は、すっ飛んでしまいました。納付率66%という国民年金の空洞化、企業の保険料逃れによる厚生年金の空洞化がさらに進んでしまうのではないかと心配です。
渕上:いま、最大の問題は、基礎年金では高齢者の最低限の生活を保障できないことだと思う。基礎年金は満額で月6万6千円だが、マクロ経済スライドにより、その水準は20年間徐々に低下し、報酬比例部分と同じく約15%も抑えられる。生活保護の生活扶助水準より低くなってしまう。これから医療・介護の保険料負担や自己負担などが増えていくことを考えると極めて深刻だ。
小林:社民党は、国民・厚生・共済年金等をすべて一元化すること、全額税を財源とする「基礎的暮らし年金」(だれでも月8万円)と所得比例年金の組み合わせを提案しました。選挙での反応はどうでしたか。
渕上:基礎年金が老後のセーフティネット(安全網)の役割を果たせなくなり、国民の多くは高齢期の最低所得保障を望んでいる。その意味で、「基礎的暮らし年金」は国民の支持を得ていると思う。ただ、全員一律に支給する「基礎的暮らし年金」は巨額で財源の確保が難しい。いま、5人に1人が65歳以上の高齢者で、2013年には4人に1人、2035年には3人に1人、2055年には2.5人。現役世代が超高齢社会を支えきれるのか心配だ。ハードルは多いけれど、所得比例の年金制度をベースに、受け取る年金が暮らしていける水準に達しない高齢者について、足りない分を税金で補うという形を検討したい。
年金、医療、介護、福祉を総合的に考える視点が必要
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小林:介護保険制度も信頼が揺らいでいますね。「コムスン」の介護報酬不正受給事件にも愕然としましたね。コムスンには、介護サービス事業からの「レッドカード」(退出命令)が出され、譲渡先も決まりつつありますが、コムスン全体で約6万5千人の利用者、コムスンの職員は約4万5千人います。利用者が地域で介護サービスを継続的に受けられるのか、職員の雇用はどうなるのか、問題山積です。

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渕上:一昨年の制度見直しで、軽度のお年寄りはヘルパーの利用が大幅に制限され、福祉用具も取り上げられた。「保険料あって介護なし」とまで言われる。それに加えて、人材派遣の新興企業が、介護保険とヘルパーを食いものにして全国に事業をチェーン展開し、不正な利益を上げていた。厚労省は無防備で無策。介護保険は7年目にして行き詰まっている。
小林:来年の4月からは、75歳以上の高齢者を他の世代と切り離して、全員を強制加入させる「後期高齢者医療制度」が始まります。対象者は約1千3百万人で、その内、これまで給与所得の子ども等の被扶養者として保険料を支払う必要がなかった高齢者2百万人が、所得に応じて新たな保険料を払うことになります。厚労省の試算では、平均保険料は月額6千2百円(経過措置で2年間半額)で、介護保険料と合わせると毎月1万円強。夫婦二人世帯で2万円が年金から天引きされる。もしも、保険料が払えなかった場合、保険証が取り上げられます。
渕上:そもそも「老人医療費」の削減を目的に、病気になったり、治療が必要な状態となる確率が高いハイリスクの人たちを集めた保険として成り立たないのではないか。後期高齢者医療制度の診療報酬は、他の世代と別になるため、保険で受けられる医療内容が制限され、必要な医療が受けられなくなる危険もあるね。年金・医療・介護・福祉をバラバラに議論するのではなく総合的に見ていかないといけない。
逆転参院で社民党がキャスチングボートを握る
小林:参議院では与野党が逆転しました。社民党は、最低賃金法の改正と後期高齢者医療制度の凍結を、民主、社民、国民新党の3野党で共闘できないかと提起しています。是非、実現させたいですね。
渕上:臨時国会には、労働契約法案、労基法の改正案、最低賃金法の改正案が継続になっている。1980年代から進んだ労働法制の規制緩和は、政府の「規制緩和推進計画」によって、90年代から現在に至るまで、強引に推し進められてきた。その結果、正規雇用の割合は低下を続け、所得格差やワーキングプアなどの問題が出ている。国民を支える雇用、社会保険(防貧)、公的扶助(救貧)の3つのセーフティネットは、どれも機能不全に陥っていると思う。「仕事への誇り」「人間としての誇り」を大切に制度設計し直さなくてはならない。
小林:逆転参院で社民党の役割は大きくなっている。渕上議員もお忙しくなると思いますが、これからの国会運営と決意を聞かせてください。
渕上:元々民主党は、憲法や安全保障問題については党内が揺れており、経済政策についても規制緩和・競争重視の姿勢がある。民主党と自民党の二大政党による翼賛議会になる危険もある。その意味で、憲法や脱原発、社会的弱者の人権・社会保障にはっきりとした政策を持つ社民党の存在は大きい。民主党は参議院で第一党とはいえ、単独過半数ではありません。社民党は国民新党などとともに、キャスティングボートを握っている。その利点を生かして、民主党についてもきちんとチェックするとともに、野党の連携・共闘を深め、悪政阻止を強調したいと考えています。
集団的自衛権導入やテロ特措法延長、米軍再編強化を阻止する闘いを強化すること、2010年に憲法改正の発議をめざす憲法審査会を凍結させること、これらについて民主党への働きかけを含めて頑張ります。
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| 2007.9.18 |
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