インタビュー 渕上貞雄参議院議員
数の横暴を許さず、国会勢力の逆転へ
質問者(以下Q).これまでの議員活動を振り返って、どのような感想をお持ちですか。
渕上議員(以下A).労働運動から政治の世界に入ったわけですが、ものの見方や考え方が変わったということはありませんね。
 ただ、国会は立法府として、法律をつくることができるところです。しかも議員立法という方法で、みずからが法案提出者となることができます。この責任の重さは、大変緊張し充実した瞬間といえます。
 良くいわれますように、官僚とのせめぎ合いは想像を絶し、自らの利権や予算が絡む場合はとくに厳しいですね。ですから本当に必要な法律をつくろうとする場合、議員立法にこだわらずに内閣(官僚)側から提出させる――ということも考えられるひとつです。少し踏み込んだ話をしましたが、ひとつひとつの法案ごとに真剣な議論と取り組みがなされています。
 残念なことに、国会は「数が力」であり、圧倒的多数の与党が強行手段(採決)に持ち込めば、審議途中であっても採決されてしまいます。悪法も法なりです。このときほど数が欲しいと思うことはありません。

印象残るPKO審議
Q.国会審議において、一番印象に残っていることはなんですか。
A.やはりPKOの深夜国会(2001年10月15日)が一番印象に残っていますね。牛歩という戦術で抵抗しましたが、残念ながら成立してしまいました。いまでも思うのですが、この深夜国会は戦後の日本における歴史の転換点であったような気がします。
 この間の政界再編という流れの中で保守化傾向が強まり、国会勢力は賛成者が多数を占めることになりました。このため十分な審議なしに法案成立という現実があります。これにひるむことなく、反戦・平和の旗をさらに高く掲げ、一人でも多くの仲間と連帯し、この流れを押し返していきたいと思います。とくに戦争を経験した者の責務として、未来に禍根を残さないよう頑張りたいと思います。

戦争の犠牲は真っ先に女性・子どもに
Q.渕上議員は戦争を体験していると聞きますが、今日のイラクをはじめとする状況についてはどう考えますか。
A.大変悲しいことです。人が人を殺すという狂気が、平然と行われるのが戦争です。今回の米英によるイラク攻撃によって犠牲となったのは女性や子どもであり、国民です。いかなる理由があろうとも、武力によって人や国を支配することは許されることではありませんし、あってはなりません。
 平和外交という国際ルールに則った方法と手段で問題の解決にあたることです。日本は世界で唯一の被爆国として、そのことを特に強く推し進める責任があります。また朝鮮民主主義人民共和国の核拡散防止条約からの脱退をはじめとする一連の核疑惑やミサイル発射についても、軍事的圧力をかけるのではなく平和的攻勢を強める中で、まずは国交の樹立をはかることが必要だと思います。
 拉致という大変卑劣な行為は絶対に許されることではありませんし、被害者や家族の皆様の心痛には察するに余りあるものがあります。二度と再び起きないように国交関係の正常化を迫り、一日も早い全容解明に向け最大限の取り組みをしたいと思います。

春闘オルグで得た財産――私鉄の仲間
Q.私鉄労働運動で一番印象に残っていることは。
A.私鉄九州地連の頃、九州や全国の私鉄の仲間などいろいろな人と知り合ったことです。よく人は財産といわれますが、本当に実感しています。

 一番印象に残っているといえば、春闘オルグにいった時のことですね。
妥結前の会社との駆け引きや、組合役員との腹合わせなど、普段ではとても経験できないことを経験させていただきました。また、当時は労働組合を嫌う経営者が結構いましたが、よくよく話してみれば非常に人間味のある経営者が多く、いまでもお付き合いをさせていただいている方もいます。もちろん組合の皆さんには行く先々でお世話になっていますし、ご支援いただいております。言葉では言い表せないくらい感謝をしています。
 最初にも言いましたが、本当に私鉄の仲間でよかったと思います。

踏まえてほしい労働運動の原点
Q.議員になってから、私鉄だけでなく多くの組合と交流があると思いますが、いまの労働運動、労働組合に一言ありましたらお願いします。
A.私が組合役員をしていた頃とは、政治的にも経済的にも大きく変わっていますので、経験主義的な発言は控えたいと思いますが、労働組合運動の原点は変わらないものと思います。
 私鉄総連は「一人でも泣いているものがないように」というスローガンを持っていますが、この気持ちが大切であり、ここが原点ではないでしょうか。労働組合の組織率低下に歯止めがかかっていませんが、連合調査で明らかなように、労働組合を必要と考える人はまだまだ多くいます。労働組合運動の原点を踏まえた、あらたな運動の展開を指し示す時だと思います。